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【社長の「あれもこれも」を卒業】インパクト最大化と3つの判断基準

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「毎日忙しく、次々と新しい施策を打ち出している。それなのに、なぜか売上が伸び悩み、現場は疲弊している……」

この空回りの原因は、社長の能力不足ではありません。皮肉にも、あなたの「前向きな意欲」がリソースを分散させ、成長にブレーキをかけているのです。ビジネスにおいて、10個の「そこそこの成果」に価値はありません。必要なのは、市場を独占する1個の「圧倒的な成果」です。

本記事では、感覚的な経営から脱却し、リソースを一点突破させるための「3つの判断基準」を徹底解説します。「やること」を増やすのをやめ、「やらないこと」を決める。その決断こそが、停滞した組織を爆速で変える唯一の鍵となります。

目次

はじめに:なぜ「一生懸命な社長」ほど会社を停滞させるのか

「新規事業の種を見つけた」「競合が始めたあの施策、うちもやるべきだ」「SNSも動画も、今は全部やるのが当たり前だ」。 社長が情熱を持ち、次々と新しいアイデアを打ち出すことは、本来会社の成長エンジンであるはずです。しかし、その情熱が「リソースの分散」という牙を剥いたとき、会社は音を立てて停滞し始めます。

多くの現場を見てきた中で、成長が止まる会社には共通点があります。それは、社長が「やるべきこと」を増やす一方で、「やらないこと」を決めていないという点です。

本記事では、限られた経営資源(ヒト・モノ・カネ・時間)をどこに集中投下すべきか、感覚ではなく「仕組み」で判断するための3つの基準を徹底解説します。3000文字を超えるこの記事を読み終える頃には、あなたの机の上に積み上がった「あれもこれも」を整理し、インパクトを最大化するための具体的な道筋が見えているはずです。


第1章:リソース分散がもたらす「3つの毒」

具体的な判断基準に入る前に、なぜ「手を広げすぎること」が危険なのか、そのメカニズムを正しく理解しておきましょう。ここを軽視すると、どんなフレームワークを導入しても「結局、全部大事だから全部やろう」という元の黙阿弥に戻ってしまいます。

1. コンテキストスイッチングによる「見えない損失」

100の力を持つエース社員に、5つのプロジェクトを同時に持たせたとします。理論上は1プロジェクトに20ずつの力が配分されるはずですが、現実は異なります。 人間がタスクを切り替える際、脳が元の集中状態に戻るまでには平均で23分かかると言われています。これを「コンテキストスイッチング」と呼びます。5つのタスクを並行すると、この切り替えコストだけで稼働時間の40%近くが失われる計算になります。つまり、リソースを分散させた瞬間に、あなたの会社のエースは「半分以下の能力」しか発揮できなくなっているのです。

2. 「中途半端な成果」の積み上げはゼロと同じ

ビジネスの世界では、80点の成果を5つ作るよりも、120点の成果を1つ作る方が圧倒的にインパクトが大きくなります。市場で2位以下がその他大勢として埋もれる中、1位だけが利益を独占する「勝者総取り」の構造があるからです。 「あれもこれも」と手を広げた結果、すべてが70点〜80点に終わる組織は、どこにも「一点突破」の強みが生まれず、競合に少しずつシェアを奪われていきます。

3. 社員のバーンアウトと「学習性無力感」

次々に新しい指示が降り、昨日までの優先事項が今日には変わる。こうした環境では、社員は「どうせ頑張っても途中で方針が変わる」「目の前の仕事を終わらせることだけが目的」という思考に陥ります。これが「学習性無力感」です。一度この状態になった組織は、社長がどれだけ熱くビジョンを語っても、現場は冷ややかな目で見るようになります。


第2章:判断基準1・ROI(投資対効果)を共通言語にする

【結論】すべての施策を「いくら使って、いくら戻るか」という数値に置き換え、効率の良い順に並べ替えてください。

ノウハウの第一歩は、感情を排除した「数字」による評価です。

1. 「利益の額」ではなく「利益の率」を見る

多くの経営者が陥る罠が、利益の「絶対額」で優先順位をつけてしまうことです。

  • 施策A: 1,000万円の利益が出る。ただし、コスト(広告費・人件費)に900万円かかる。
  • 施策B: 200万円の利益が出る。ただし、コストは20万円で済む。

額だけ見れば施策Aですが、ROIで見れば施策Aは11%(100÷900)、施策Bは1000%(180÷20)です。リソースが限られているなら、まず施策Bを10回繰り返す方法を考えるべきです。

2. 人件費を「見えないコスト」として計上する

中小企業でROIが正しく計算されない最大の理由は、「社員の工数」をゼロ円で計算しているからです。 新しいSNS運用を始める際、広告費がゼロでも、担当者が月に40時間使っていれば、時給3,000円として12万円のコストが発生しています。この「見えないコスト」を含めてもなお、その施策は利益を生んでいるでしょうか?

3. 実践ステップ:ROI棚卸し

  1. 全プロジェクトのリストアップ:現在進行中のものをすべて書き出す。
  2. コストの算出:外注費、広告費、そして担当者の「想定工数(時間×時給)」を合算する。
  3. リターンの算出:その施策から直接・間接に得られる利益を見積もる。
  4. ROIランキングの作成:率の高い順に並べる。

COOの視点: ROIが低いからといって即中止できないもの(ブランド維持など)もあります。その場合は「これは利益のためではなく、維持のためのコストだ」と明確に分類し、全リソースの何%までと上限を決めることが重要です。


第3章:判断基準2・緊急度×重要度マトリクス(第2領域の聖域化)

【結論】「重要だが緊急ではない業務(第2領域)」に、意図的にスケジュールの20%を割いてください。

これは時間管理の古典ですが、実践できている経営者は驚くほど少ないのが現実です。

1. 多くの社長を殺す「第3領域」の正体

「重要ではないが、緊急なこと」。これが第3領域です。

  • 突然かかってくる営業電話への対応
  • 特に目的のない定例会議への出席
  • 即レスの必要がないメールやチャットへの返信 これらは「反応しているだけ」で時間が過ぎるため、達成感はありますが、事業へのインパクトはゼロです。社長が第3領域に浸かっている限り、会社に未来はありません。

2. インパクトを最大化する「第2領域」とは

「緊急ではないが、極めて重要なこと」。これこそが会社のインパクトを最大化します。

  • 仕組み化:自分が現場にいなくても回るマニュアル作成
  • 人材育成:右腕となるマネージャーとの1on1
  • 中長期戦略:3年後の市場予測と自社のポジショニング確認 これらは「明日やらなくても誰も困らない」ため、意識しないと永遠に後回しにされます。

3. 実践ステップ:カレンダーの「聖域化」

  1. 「重要・非緊急」タスクを3つ特定する(例:採用媒体の刷新、業務フローの図解化など)。
  2. カレンダーを先に埋める:毎週特定の時間(例:火曜と木曜の午前中)を「第2領域タイム」としてブロックする。
  3. 遮断する:その時間は通知をオフにし、誰の相談も受け付けない。

COOの視点: 第2領域が進まない理由は、タスクが「抽象的」だからです。「戦略を考える」ではなく「A事業の競合3社の価格表を自社と比較する」といった、具体的な作業レベルまで分解してカレンダーに入れましょう。


第4章:判断基準3・ICEスコアで「勝率」を可視化する

【結論】新しい施策を始める前に「インパクト・確信度・容易性」を10点満点で採点し、合計点が高いものから着手してください。

社長の「ひらめき」を客観的なデータに変えるのが、このICEスコアです。

1. 3つの指標を正しく理解する

  1. Impact(影響度):成功した場合、売上や利益がどれくらい増えるか?
  2. Confidence(確信度):どれくらいの確率で成功すると言えるか?(過去のデータや競合事例はあるか?)
  3. Ease(容易性):どれだけ「簡単に」実行できるか?(予算、期間、人員)

2. なぜ「Ease(容易性)」が重要なのか

多くの社長は「Impact」だけで判断します。「この新製品が当たれば1億円だ!」という具合です。しかし、完成までに1年かかり(Easeが低い)、成功率も未知数(Confidenceが低い)であれば、その間会社のリソースは拘束され続け、キャッシュフローを圧迫します。 逆に、Impactは「100万円」でも、今日設定を変えるだけで終わり(Easeが10)、過去に実績がある(Confidenceが9)施策なら、すぐにやるべきです。こうした「小さな勝利」を積み重ねる方が、組織のエネルギーは高く保たれます。

3. 実践ステップ:ICEスコアリング会議

新しいアイデアが出たら、ホワイトボードに以下の表を書きましょう。

  • 施策A:新機能開発(I: 9 / C: 3 / E: 2 = 計14点)
  • 施策B:既存客へのアップセルメール送信(I: 5 / C: 8 / E: 9 = 計22点)

この合計点を見れば、どちらを先にやるべきかは一目瞭然です。社長の熱量に左右されず、チーム全体が納得して優先順位を受け入れられるようになります。


第5章:インパクト最大化を支える「組織の仕組み」

優れた判断基準があっても、それが社長の頭の中にしかないのでは不十分です。組織全体が同じ基準で動くための「仕組み化」が必要です。

1. 「Not To-Doリスト」を全社共有する

「やるべきこと」と同じくらい「今はやらないこと」を明確にし、全社員が見える場所に掲示してください。「SNS運用は来期までやらない」「この価格帯の顧客は追わない」と宣言することで、現場は迷いなく目の前の重要課題に集中できるようになります。

2. 「週1回のリソース棚卸し」をルーチン化する

優先順位は鮮度が命です。週に一度、15分だけで良いので「今、全社のリソース(時間)がどのプロジェクトに何%割かれているか」をチェックする時間を持ちましょう。もし、優先順位の低いタスクに時間が溶けているなら、その場で止める決断を下すのが社長の仕事です。

3. 権限移譲という最大のリソース配分

社長自身が「判断」に使う時間を減らすことも、重要なリソース配分です。ICEスコアのような「基準」を現場に渡してしまえば、小さな施策の優先順位は現場で判断できるようになります。社長は、より大きな「第2領域」へと自分のリソースをシフトさせていくべきです。


まとめ:あなたの決断が会社の「密度」を変える

リソースを分散させることは、会社の成長を「薄める」行為です。逆に、明確な判断基準を持ってリソースを集中させることは、会社の「密度」を高め、一点突破の爆発力を生む行為です。

社長であるあなたの仕事は、現場を忙しくさせることではありません。現場が「最もインパクトの出る仕事」に没頭できる環境を、「やらないこと」を決めることで作ってあげることです。

今回ご紹介したROI、重要度マトリクス、ICEスコア。これらすべてを一度に導入する必要はありません。まずは一つ、今日から使えるものを選んでみてください。


【明日からできる】インパクト最大化のアクションプラン

この記事の知識を「知っている」から「できている」に変えるために、今すぐ以下の3つを行ってください。

  1. プロジェクトの棚卸し(30分) 現在進行中の施策をすべて書き出し、直感で良いので「ICEスコア」をつけてください。合計点が15点以下のものは、一旦中止か保留のスタンプを押しましょう。
  2. 「第2領域」の予約(5分) 今すぐGoogleカレンダーを開き、来週のどこかに2時間の「聖域」を作ってください。タイトルは「重要・非緊急タスク実行」とします。
  3. 社員への宣言(5分) 「今月は、このプロジェクトを成功させるために、それ以外の新しいことは一切始めない」とチームに伝えてください。現場の空気が一瞬で軽くなるのを感じるはずです。

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この記事の監修者

1977年生まれ。福岡県出身。地元のシステム受託開発会社に営業として就職するも東京転勤をきっかけに、当時球団買収などで世間を騒がせていた株式会社ライブドアに2004年入社。斬新な企画によりセミナー事業の収益を大きく伸ばす。

同社退社後、2007年に株式会社びりかんを設立。過去の経験を活かし、ベンチャーや中小企業向けに総合支援代行サービスを開始。業種問わず、マーケティングから営業強化、組織構築、制度再設計、採用改善、業務効率化、システム導入など多岐に渡って支援。「倒産寸前の零細企業をわずか3ヶ月で月商を7倍まで引き上げV字回復」「数名規模のITベンチャーを支援して同じく毎月数千万円の赤字状態から半年で黒字化、わずか5年でマザーズ上場を達成」「地方の中小製造業で幹部育成を行い、各種業務改善をやり続けた結果、創業30年以来の最高益2億円を叩き出す」「SaaS企業でマーケティングと営業を改善しMRRを短期間で3倍にする」など数々の成功実績を持つ

これまでに支援した企業は120社を超え、うち4社は上場を成功させている(株式会社オークファン、株式会社サイバーセキュリティクラウド、株式会社ROBOT PAYMENT)。また、開催したセミナーやワークショップののべ参加人数は3000名を超える。

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